こけしの恋歌~コイウタ~
男の人は私の向かいのデスクの椅子を引いて、ドカッと座った。

「派遣社員の人かな?」

どうして派遣社員だとわかったんだろう。
そもそも、この人は誰なんだろう。
社内の人だということは間違いないと思うけど。

「はい。桜庭と申します」

「俺は人事部の成瀬です」

人事部…人事部!?

ギョッとしてしまった。
それが表情に出てしまったようで。

「どうかした?」

心配されて、顔を覗き込まれた。

もしかしてサクラのことを知ってたりするんだろうか。
サクラのことは派遣会社とここの人事部長には知らせてある。
本当はここの会社の人には誰にも知られたくはなかった。
派遣の手続き上、やむを得ず人事部長には知らせることになってしまった。

だから、人事部って聞いて、ギョッとしてしまったけど、サクラについてなにも聞いてこないってことは、知らないってことなのかな。

「なんでもありません」

おもいっきり首を左右に振った。

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