幸せの静寂

　この日も皆、部活に真剣に取り組んだいたが、やへり松雪君は不調だった。
　私は、休憩の合図のホイッスルを鳴らした。水分補給をしている人、練習がきつくて床で伸びている人と様々だ。
　私は、松雪君が気になったため、そちらの方を見ると、同じポジションである天才リベロこと先輩の猫田先輩と楽しそうに話していた。すると、猫田先輩は他の後輩に呼ばれ、松雪君の元を離れた。私は、その時はっとした。
(そっか…松雪君は恋をしてるんだ。猫田先輩に……叶わぬ片想いを…)
片想いをしている人と一緒にいるときは楽しくて、ずっとこの時間が続けばいいのにって思う。だけど、そんな時間がずっと続くはずがない。その人が、自分のもとを去ってしまえば悲しくなって、自分が手を伸ばしても届かないって思い知らされて…泣きそうになる。それが、片想い。



　私は、今日もほぼほぼ強制的に連れてきた松雪君と(天然バカは抜き)帰っている。
「南雲さん、今日はどうしたの？」
私は、意を決して話した。
「松雪君、本当は恋をしてるんじゃないの？猫田先輩に…」
「…何で、そう思うの？」松雪君はうつむき加減に言った。
「だって、松雪君が猫田先輩と話しているとき、とっても楽しそうなのに、猫田先輩が去ったら悲しそうな顔をしているから……ねぇ、私に力になれることがあったら言って？」
「…っそんなのっ南雲さんには関係ないじゃん！」
私は、あの時、体育館裏で真澄に言われた記憶が鮮明によみがえった。
「あ…ごめん……あの、そんなつもりじゃなくて……」
松雪君は少し慌てたように言った。
「ううん、大丈夫。だって私は、あの日から少し気が楽になった気がするの。両親の愛情を感じて、仲間だと言われて、救いたいと言われて、一緒に悩んでくれて、こんな私のために皆が一致団結して、頑張ってくれているから。だがら、私は松雪君を助けたいんだよ。皆が私を助けてくれたように…恩返しがしたいんだ。」
松雪君は驚いた顔をしたが、頷いてくれた。