幸せの静寂
_________毎日、猫田先輩のことはあきらめなきゃって思っていたのに、優しくされるたびに諦めたくなくなっちゃって・・・」
「それで、バレーボールに力がはいらなかったの?」
「・・うん。」
私たちは、帰り道にある公園のベンチで話していた。
しばらく、静寂が続く。
「・・・ごめん。やっぱり気持ち悪いよね・・男が、男を好きなんて。」
「え、なんで?」
「え、いや、だって・・」
「松雪君が抱いてるその気持ちは、好きっていう気持ちなんでしょ?そんなの、相手が男だろうが、女だろうが関係ないよ。好きっていう気持ちに、嘘、偽りなんてないんだから。」
松雪君は、少し驚いたような表情になったが、すぐに優しくふっと笑った。
「ありがとう。」
 そして、私たちは明日も一緒に帰る約束をして、その日は別れた。 

ー翌日ー
 この日も公園のベンチで話していると、松雪君が、私をまっすぐに見て言った。
「僕、決めたよ。」
「ん?何を?」
「猫田先輩に自分の気持ちを伝える。」
「え、えええええ!?」
私は、思わずベンチからずり落ちそうになった。
「そんなに、驚かなくても・・」
「ご、ごめん・・でも、なんで急に?」
「だって、いつまでもくよくよしてるわけにはいかないからね。けりをつけてくるよ。南雲さんのためにもね。」
その時、私は、独り立ちをした子供をもつ母親の気持ちが、少し分かったような気がした。松雪君には、少し失礼だけど。
「いま、なんか失礼なこと、考えてない?」
「いや、全然?でも、まぁ、頑張れ!応援してる。」
「うん、ありがとう。」
その後、私たちは、告白する場所・日時などを決めて別れた。
 私は、帰りながら、ふと思った。
(少しは、恩返しができたかな。でも、やっぱり、松雪君には、猫田先輩とくっついて欲しいなぁ。あんなに、純粋で、優しくて、一途な人ってなかなかいないよ。)
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