再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
やだ、もう。からかわれているのに、どうして嬉しいと思ってるの……。

最近はずっと気持ちの低いところで感情が動くことが多かったけれど、航くんが戻ってきてからは高いところで動いている気がして、不思議と身体も軽く感じる。

……もしかして、以前に戻ったような会話ができてるから、私、浮かれてるの……?

ふと浮かんだ自分の感情に心臓を暴れさせていると、料理が運ばれてきた。

航くんの言う通り、一品目から海老と海草のゴマの和え物という私の好きな料理だった。

テンションが上がってもおかしくない状況に逃げ道を見つけた私は、「いただきます。おいしそう!」と箸を手に取った。

一口食べるとぷりぷりの海老の食感はもちろんのこと、鼻から抜ける白ゴマの風味がすごくよくて箸が止まらない。

それは航くんも同じようだった。

ふと思いつき、ちょっとお行儀が悪いかなと思いながら、私は自分の小鉢から海老を箸で持ち上げ航くんの小鉢に入れる。


「はい。航くん、これあげる」

「は? どういう風の吹き回しだよ。紗菜、海老好きだろ。他にも何か仕事でミスしたのか?」


すっかりくつろぎモードの航くんが眉をひそめる。

私の好意を企みと捉える航くんの思考回路は一度見直してもらう必要がありそうだ。


「してません! 航くんだって海老好きでしょ? 海外の出張でお疲れだろうし、食べて」

「ふーん。昔から変わらないよな。そういうところ」


ふと航くんの頬が満足そうに緩み、私が入れたばかりの海老を箸で掴んで口に運ぶ。

今日の航くんはいつもよりも笑顔を見せてくれるし、なんだか機嫌がよさそうだ。

出張を終えて気持ちが緩んだのか……それとも、何かいいことがあったのかな?
 
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