再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「和食を提案したのも、俺のことを考えてのことだろ? 海外から戻ってきたなら和食が食べたいだろうって」
「!」
図星だった。
昔から航くんが和食好きだということを知っているから、きっと食べたいだろうと思ったのだ。
でも素直に認めるのは照れ臭くて、遠回りをしながら答える。
「私も和食の気分だったの。……でも、その通り、でしょ?」
「まぁな。やっと落ち着いた気がする」
ほっとした様子で料理を口に運ぶ航くんの姿に、自然と私は「よかった」と頬を緩めた。
「やっと笑ったな」
「え?」
「今日はずっと不安そうな顔してたし、最近は仏頂面が多かっただろ。なんか拗ねてるみたいにさ。そういうときは余計なことを言わずに放置するのが一番だからな。そのうち紗菜のほうから音をあげてくる」
「別に拗ねてなんかないよ!」
「どうだか」
噛みつく私に対して、航くんは可笑しそうに笑うだけだ。
たしかに航くんのことを考えると浮かんでくる妙な感情を隠すために、私の笑顔は減っていたかもしれない。
でも航くんだって仕事中には私にだけ笑顔を見せてくれないし、人のことは言えないと思う。
とはいえ、今はただ、お世辞にも優しい笑顔とは言えなくても彼の笑顔を見せてもらえたことが嬉しくて、余計なことは言わなかった。