再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
お会計を済ませて店を出ると、そこまで訪れている週末を喜ぶように街は賑わいを見せていた。
航くんは何も言うことなく私の手を取り、車があるパーキングに向かって歩き出そうとする。
私は慌てて手を引き、彼の手から逃れた。
「あの、私ここで失礼します。バス停もすぐそこなので」
「は? 何、急によそよそしくなってるんだよ。車こっちだから早く来い」
「や、でも」
「ほら、来いって」
「ちょっと……」
航くんは再び私の手を捕らえ、反抗する私を引きずるようにして歩き出す。
誰かに見られてはいけないと抵抗しようとしたけれど航くんの力に叶うわけもなく、私はすぐに抵抗するのをやめた。
騒いで目立つよりも早く人気のないところへ去るほうが得策だ。
少しでも目立たないようにするために、私は航くんの斜め後ろに隠れて歩く。
でもどうしても周りから女の人の視線を感じて、ふたりでいることだけではなくその隣にいることすら罪悪感を覚えてしまう。
こんなこと、昔は感じたことなかったのに……。
それにさっきからずっと脳裏に藤岡さんの綺麗な笑顔が浮かんでしまって、頭から消えてくれない。