再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「翼くん、ありがとう」
「いいえ」
ミルクティーを受け取ると、心地いいあたたかさが手に伝わってきた。
「いただきます」と言って一口飲むと、その甘さが身体の芯まで染み渡るようで頬が自然と緩む。
緊張と忙しさで気持ちを緩める暇もなかったから、一気に身体の力が緩んだようだった。
イスに座った翼くんも同じようにコーヒーを飲んでいる。
今なら話しかけてもいいかなと窺いながら「少し話してもいい?」と聞くと、「いいよ」と優しい笑顔で頷いてくれた。
「改めましてになっちゃうけど、久しぶりだね。翼くん、元気だった?」
「あぁ。この通り。紗菜ちゃんも元気そうでなによりだよ」
「うん、ありがとう。まさか翼くんと一緒の会社で働いてたなんて、本当に驚いちゃった。翼くん、ずっと海外にいたの?」
「あぁ、この会社に入社して丸2年が経つ頃に辞令が下りて、3年間行ってたんだ。こっちに戻ることもあったけど長くはいなかったから、紗菜ちゃんとも会わなかったのかもしれないな」
入社してからたったの2年で海外事業部に配属が決まるなんて、最速なのではないだろうか。
彼はそれだけ期待されているのだろう。
「そっか。私、3年前に入社したから、ちょうどすれ違いだったんだね。海外事業部ってうちの花形でエース揃いだし、そんなところにいたなんて本当に翼くんすごいよね。昔もそうだったけど、翼くんってなんでもできてカッコいい!」
「そうかな」
「うん。翼くんに再会できて、本当にドキドキしてたの。夢を見てるみたいで」
「へぇ、そっか。……でもそうだね。俺もドキドキしてたかな」
「ほんと? 嬉しい」
翼くんも同じように感じてくれていたことが嬉しくて頬を緩めると、翼くんがデスクの上にカップを置いたカタンという音が妙にオフィス内に響いた。
それと同時に翼くんが立ち上がり、私の方へ近づいてくる。
彼の行動を不思議に思った私もデスクの上にカップを置き、イスを翼くんの方に向けて彼のことを見上げた。