再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
思う存分、蛍を楽しんだ後、高揚した気分のまま航くんの車に戻った。
そのまま帰るかと思いきや、航くんは「もう少しだけ付き合って」と言ってきた。
今日はもうこのまま流されようと頷くと、彼は「ありがと」と短く言い、車を走らせ始めた。
しばらくすると、ある高台で車が止まった。
航くんに促され車の外に出る。
辺りには人はほとんどおらず、知り合いに見られることもなさそうだ。
人目を気にすることをやめて航くんに手をひかれるまま少し歩くと、目の前に闇にきらびやかに輝く宝石をたくさん散りばめたような夜景が広がった。
「わ、綺麗……」
現金なもので、さっきまでは自然の光に感動していたのに、人工の光も綺麗だと思ってしまう。
心地いい風に吹かれながら夜景を見ていると、航くんが話しかけてきた。
「紗菜。さっきの答え、わかったか?」
「あっ、えっと……」
航くんからの疑問はすっかり頭から抜け落ちていて、何も考えていなかった私は口ごもる。
「やっぱり鈍感紗菜にははっきり言わないとわからないか」
「……もう認めるから教えてよ」
どうせ考えてもわからないのだから、もうこのまま教えてほしい。
素直に認めると、航くんは表情を引き締め、私のことをまっすぐ見据えた。
そして、ゆっくり口を開く。
「紗菜だよ」
「え?」
「俺が諦めたくないのは紗菜、お前だよ」
「……あは、何それ、意味わかんないよ」
「ここまで言えば、いい加減わかるだろ?」
人に対する“諦めたくない”という言葉だけだと、私の単純な頭では、命や恋愛に対してだと思ってしまう。
でも、それは間違いだ。
私の命がすぐにどうなるという状況ではないし、航くんには結婚を考えている大切な人がいるのだから恋愛に結びつくわけはない。
きっとまた私をからかおうとしているのだと思うけれど、彼の表情はいつになく真剣で、からかっているような雰囲気ではない。
鼓動がうるさく鳴り響いて胸が苦しい。