再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「瀬戸さんと梶原さんに、この場所で新郎新婦のモデルになっていただきたいと思っているんです。もちろん、ドレスなどの衣装はこちらで用意させていただきますので」
「……えっ?」
仕事を忘れて思わず声を上げてしまう。
それって、憧れのウェディングドレスを試着することができるということ?
しかも、航くんが新郎役……?
「ぜひお願いできませんか? 梶原さんは準備に少しお時間をいただくことになりますけど、瀬戸さんのほうは短めに済ませられるようにしますから」
予想していなかった状況に戸惑いながら航くんを見ると、少し驚いたような表情を浮かべた彼の視線が私に落ちてきた。
でも彼は我に返ったように小さく息をつき、何も言わずに白木さんの方を向いてしまう。
「申し訳ありません。光栄なお話ですけど、これから先の確認作業も詰まってますので、必要なら他の方に依頼していただけると助かります」
「やはりそうですよね……。梶原さんだけでもお願いできませんか? 彼女の太陽のような笑顔はうちの会場にぴったりだと一目惚れしたんです。瀬戸さんも一緒がよかったんですけど……失礼になるかもしれませんが、おふたり、とてもお似合いに見えたから」
「!」
私にはもったいないくらいの誉め言葉に加え、「お似合い」という言葉を言ってもらえるなんて思ってもみなくて、思わず息をのんだ。
……白木さんの言葉はすごく嬉しいけれど、どう答えたらいいのかな……。
航くんが断った理由はわかる。
彼は空間を作り上げるという重要な仕事があるし、時間を取るのも難しいだろう。
でも私は特に任された仕事もなく、ここまで嬉しい言葉を言われているのに断る理由が見つからない。
でも、本番ではないとはいえ、航くんが一緒ではないことが引っかかる。
彼が言っていた将来を期待させるような言葉はこういうことではないと思うし、航くんはこの状況をどう感じているのかな……?
航くんの気持ちを知りたくて彼の顔を見上げるけれど、彼の視線は落ちてこない。