再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「梶原さん、いかがですか? もしご結婚されていてもいなくても、ドレスを着たからといって有名な迷信通りになるなんてことはありませんし、むしろ、私たちの周りでは逆に幸せなことが起こっているんですよ。ドレスはもちろん、責任持って梶原さんに合うデザインを選ばせていただきます。少しでも興味があるなら、ぜひ」
「……えっと……」
ここまで言われて断るのも申し訳なく思えてきて、何よりも迷信はただの迷信なのだと言われたことでドレスを着たいという想いが強くなった。
それでもやっぱりひとりでは気が進まなくて、ダメ元で航くんに「ちょっといいですか」と声をかける。
白木さんに断りを入れて背を向け、航くんにだけ聞こえるように問いかける。
「あの……瀬戸さん、やっぱり時間取れませんか? ここまで言ってくださってますし……もしモデルをするなら、私……瀬戸さんと一緒がいいです」
公私混同するなと怒られるかもしれない。
それでも、本心を伝えたかった。
……航くんにうなずいてほしかった。
懇願するように航くんを見つめていると、彼は呆れたように息をついた。
「却下。お前には早いだろ。これは仕事だ。モデルは結衣に任せて、お前は自分ができる仕事に集中しろ。いいな」
「……は、い……」
有無を言わせない声と表情に、私は頷くしかなかった。
航くんは白木さんに向き直り、仕事モードのときに見せるクールな笑みを浮かべる。
「梶原も作業がありますので申し訳ありません」
「そうですか……。そういうことでしたら仕方ありませんね。ご無理を言って申し訳ありませんでした」
「いえ、こちらこそお役に立てず申し訳ありません」
白木さんは申し訳なさそうな笑みを向けて立ち去っていってしまった。
たしかに今は仕事中だし藤岡さんに任せればいいという意見は私も賛成するけれど、せっかくの好意だったし、想いを実現していきたいという気持ちがあるのに頑なな気がする。
一番気になるのは「私には早い」という言葉だ。
藤岡さんは大人っぽくて魅力的だからウェディングドレスが似合うけれど、私には似合わないってこと?
それは、私たちの関係が前に進まないことにも関係ある……?
「じゃあ、俺はあっちの作業に戻るから。梶原さんにも指示を出すから近くにいて」
「……わかりました」
航くんの考えていることがわからなくて、私は調整作業に戻る彼の後ろ姿をただ見つめることしかできなかった。