再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
1時間ほどで調整が終わり、チャペルから出るように指示される。
次の段取りでは、実際に人を入れて本番と同じ状態で確認するという。
今までチャペルにいなかった人たちが続々と集まってきていて、おそらく彼らは会場スタッフだろう。
女性はパーティードレスや着物、男性はスーツを身につけており、本格的な状況に驚いた。
私も今日はスーツを身につけており、この場にいても浮くことはなさそうだ。
それでも雰囲気にのまれてしまって、どうすればいいのだろうと思っていると、航くんがやってきた。
「梶原さんも新婦側の列席者として中に入って」
「え?」
「これからが梶原さんの一番の仕事だから、しっかり集中してほしい。会場の雰囲気をどう感じたか、率直な意見を後で聞かせて」
「はい……」
さっきまでは「人を呼んできてほしい」といった誰にでもできるような簡単な作業が多かったけれど、それとは違い、この指示は私自身の意見を求められている。
どれほど期待されているかはわからない。
でも少しでも航くんの仕事の役に立ちたいし、ライティングの知識がないなりにここに来た意味を残さなければならない。
そう思えば緊張感が急激に増し、身体が強ばった。
胸に手を当てて小さく深呼吸をしながら緊張をほぐすために辺りに視線を散らすと、藤岡さんの姿が見当たらなかった。
モデルの準備に行ったのかな……。
彼女のドレス姿はすごく綺麗だろうという高揚感とともに、モデル依頼を断ったときの苦しい感情も湧き上がった。
それに加えて緊張感といった感情も混ざり合って頭の中が纏まらないけれど、今は私ができることに集中しなければいけない。