再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
無駄に興奮してしまってお冷やをあおったとき、背後から声をかけられた。
「あら、光石さんと梶原さんじゃない」
「原野(はらの)さん」
声をかけてきたのはつい先日まで同僚だった、同期の原野さんと後輩の田上(たがみ)さんだ。
このふたりは以前から仲がよく、ランチはいつも一緒に行っている。
食事を終えて店をあとにするようだ。
挨拶だけで終わるかと思いきや、田上さんが興味津々の表情に変わり、私の顔を覗き込んできた。
「ちょうどよかったです!」
「えっ?」
「梶原さんに聞きたいことがあったんです! 企画営業部ってどんな感じですか!?」
「え、えっと……」
田上さんからの質問に、まさかつい今まで話していた内容を聞かれていたのではないだろうかと焦ったけれど、それならそのことを先に聞いてくるはずだ。
落ち着いて航くんのことは触れずに、当たり障りのない答えを口にしておこう。
そう思ったとき、田上さんの瞳がさらに輝きを増した。
「瀬戸さんって、やっぱり仕事する姿もカッコいいんですか!?」
「へっ?」
「タガミン落ち着きなさいよ。梶原さん、あのね、瀬戸さんと梶原さんの話が経理で持ちきりなのよ。一昨日の朝、涼木さんと会ったでしょ? そのときに瀬戸さんも一緒になって、うまくやってそうだって涼木さんが言ってて。だから、いつか梶原さんからもっと深く聞き出そうってみんなで話してたの。ほら、瀬戸さんって海外営業部でもトップを争うエースに加えて、あれだけのイケメンじゃない? 初日から総務部にも何度か瀬戸さん顔を出してて、梶原さんってばあんなカッコいい人のアシスタントすることになったなんてうらやましい!って、総務全体で大騒ぎよ。私もぜひ聞きたいわ」
「えっと……」
航くんだけが話題になるのはわかるけれど、私も含めて話題になっていたなんて、思いもしなかった。
昔の記憶が脳裏に浮かぶ。
特に中学に上がってからはこんなふうに航くんや、私が入学したときにはすでに卒業していた翼くんのことまで聞かれることが頻繁にあった。
1学年11クラスあるマンモス校だったこともあり、中には顔みしりでない子や先輩もいて、友達との貴重な休み時間を何度潰されたかもわからない。
そして、こういうときの対策も私は散々学んできている。
嘘をつくのは好きじゃないけれど、背に腹は変えられない。