再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
アートアクアリウムを出た後は、併設されているショッピングモールで航くんの買い物に付き合い、気の向くままウィンドウショッピングとお茶をして過ごした。
あっという間に太陽が低い位置で輝く時間になり、その光景を見ながら航くんの運転する車で帰宅の途につく。
今朝航くんから電話がかかってきてからというもの、1日でいろいろなことがありすぎて、ほんの8時間前のできごとが遠い昔に感じた。
胸が痛むようなできごともあったしすっかり航くんのペースに乗せられていたけれど、結果的には楽しい1日だったと思う。
終わりを感じて、どこか寂しく感じてしまうのはなぜだろうか。
ふと、目の前に流れる景色に違和感を覚えた。
「あれ? こっちの道であってる? さっきのところ、曲がらなくてよかったの?」
「あぁ」
「そう? ならいいけど……」
確か、今朝はさっきの交差点から曲がりこの海沿いの道を通って、教会に向かった記憶がある。
別のルートがあるのだろうか。
疑問を浮かべながら景色を眺めていると、車がある駐車場に入りエンジンが止まった。
「紗菜。降りて」
「え?」
短く言った航くんは、私の置いて車を降りる。
もしかしたら、まだどこか寄りたいところがあるのかもしれない。
この際、最後まで彼に付き合おうと思いながら、私も車を降りた。