再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「航くん」
「ん?」
「元カレと会ったとき、航くんがそばにいてくれて本当によかった。未練ってわけじゃないんだけど、元カレは私と別れてからちゃんと幸せを掴んだのに、私は一歩も進めてなくて、なんだか元カレに置いてかれてる気がしちゃってたから……。ひとりだったら泣いてたかもしれない」
「そう」
「航くんにとってはその場をやり過ごすための言葉だったと思うけど、心強かったし航くんの言葉に本当に救われたんだよ。ありがとう」
「いや」
航くんはそれ以上は何も言わなかったけれど、彼の表情を見ると私の言葉を受け止めてくれたのだと感じた。
駐車場の奥まで進むと、20段ほどの階段があった。
航くんは「足元気をつけろよ」とだけ言い、私のペースに合わせながら階段を上り始める。
一番上にある石畳に足をのせたとき、私の目の前にある光景が広がった。
「わぁっ……」
それは、水平線から私たちに向かって、沈みゆく太陽のオレンジの光が海上にきらめく光の道を作っている光景だった。
数時間前に私が想像したロマンチックな光景よりも、何倍も美しい光景だ。
言葉を失ったまま、航くんに手を引かれるまま石畳の先端まで歩みを進める。