再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
作業を始めて1時間ほど経った頃、翼くんに声をかけられた。
「梶原さん、調子どう? 大丈夫そう?」
「あっ、はい。今のところはなんとか」
英語という大きな不安材料はあるけれど、それ以外は今のところ引っかかるところはない。
「申し訳ないんだけど、今から外出することになったんだ。わからないことがあれば戻ってきてから聞くから、それまではできるところから作業しておいて。もし定時までに戻れなかったら明日聞くから、適当なところで切り上げていいよ」
「わかりました」
「あと、さっき渡すの忘れてたんだけど、図面の読み方とかが載ってる本。わかりやすいと思うから、よかったら使って」
「はい、ありがとうございます」
翼くんから本を受け取ると、彼は私に微笑みかけてくれた後、支度を始めた。
日本に戻ってきたばかりのはずなのに、もう外出しないといけないなんて大変だ。
社長にも呼び出されていたし、それだけ翼くんは引っ張りだこなのだろう。
早く彼の役に立てるように、まずは今日中に仕分けだけでも済ませよう。
英語がある分時間はかかると思うけれど、地道にやるしかない。
図面を少しずつでも理解できるようになれば、英語であっても内容の確認もなんとかこなしていけるだろうし、企画の内容を理解していくのは楽しいはずだ。
翼くんを見送った後、気合いを入れ、私は作業に戻った。