【完】せんぱい、いただきます。

「カルボナーラ」





私の口からこぼれた言葉。


「え?」


彼が手を止める。


「カルボナーラ」

もう一度、はっきり言う。


「実紅ちゃん、昼も食べてなかった?

じゃあ、作るか!」


彼は言った。


「え?作れるの?」

「なんかマヨネーズでもかければ大丈夫っしょ」


彼は笑う。





ああ、そうか。






「私、今日は帰るね」


私も腰を上げて使い捨てのカップを手にゴミ箱へ向かった。


「え?食べないの?俺、作るし」


彼が後ろから言う。







「私、カルボナーラが作れる人が好きなんだ」





そう言って、私はコーヒーショップを後にした。

< 133 / 163 >

この作品をシェア

pagetop