【完】せんぱい、いただきます。
「カルボナーラ」
私の口からこぼれた言葉。
「え?」
彼が手を止める。
「カルボナーラ」
もう一度、はっきり言う。
「実紅ちゃん、昼も食べてなかった?
じゃあ、作るか!」
彼は言った。
「え?作れるの?」
「なんかマヨネーズでもかければ大丈夫っしょ」
彼は笑う。
ああ、そうか。
「私、今日は帰るね」
私も腰を上げて使い捨てのカップを手にゴミ箱へ向かった。
「え?食べないの?俺、作るし」
彼が後ろから言う。
「私、カルボナーラが作れる人が好きなんだ」
そう言って、私はコーヒーショップを後にした。