【完】せんぱい、いただきます。

ショッピングモールを出たところで、彼が私の手をつかむ。



「ねえ、ちょっと待って。駅まで送らせて」


外はだいぶ暗くなっていた。


彼と並んで駅までの道を歩く。


街灯の灯りはなんだか心もとなく感じた。




「あのさ、好きな人いるの?」




彼はポツリと聞いた。


私は答えなかった。






「俺、気付いてると思うけど、



実紅ちゃんのこといいなって思ってる。



ゼミで会って、けっこう最初から気になってて。



でも話しかける勇気とか全然なくて。



だから、今、俺のこと好きじゃなくてもいいから付き合って」







彼の言葉に涙が頬をつたう。






「ごめん。私、」
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