溺甘副社長にひとり占めされてます。


「こっちかな!」


数秒迷ったのち、片方を差し出してくる。両手でそれを受け取ると、彼が含み笑いをしてきた。


「パーティードレス。良さそうなのあるか見て」

「……あの……今、ドレスって言いました?」

「うん。俺の同伴者として美麗ちゃんが着るドレスだよ」


私がドレスを着る。

想像するだけでも恐ろしいと言うのに、さらに彼は“俺の同伴者として”と付け加えてきた。

想像の域を軽く超えていく。もはや理解不能である。


「あれ? 今週末、山梨で大きなイベント控えてるんだけど、忘れちゃった?」

「イベント?……あっ!」


必死に記憶を掘り起こし、彼の言っていることを理解する。


「……45周年記念パーティ?」


恐る恐る問いかけると、彼が笑顔で首肯した。

行くと言ってしまったことをすぐに後悔する。


「親父に……あ、社長にさ、今回のパーティには恋人を同伴するようにって言われてて。恋人はいないから無理だよって言ったんだけど、そうやっていつまでもふらふらしてるから、お前はだらしがなく見えるんだって、怒られちゃって」


笑っているのに、彼の瞳はひどく切なそうだった。私まで物悲しくなってしまう。


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