溺甘副社長にひとり占めされてます。
彼はそう言って、私が元々履いていたパンプスを脱がし、一緒に選んだそのヒールの高いシルバーのパンプスを、そっと履かせてくれる。
「お手をどうぞ。お姫様」
恭しく差し出された彼の手に、私は苦笑いを浮かべながら、自分の手を重ね置く。
立ち上がれば、いつもより彼の顔を近くに感じ、無駄にドキドキしてしまう。
「顔が近くて、ドキドキしちゃうね」
「そういう余計なこと、言わないでください」
「そうだよね、ごめんね。言われたら、余計ドキドキしちゃうもんね」
分かってるなら言わないでよとちょっぴり頬を膨らませると、そんな私を見おろして白濱副社長が無邪気に笑う。
そして、掴み直した私の手を、己の腕に絡ませるように引く。
素直に彼の腕を掴めば、そのまま彼にエスコートされる形で、私はゆっくりと歩き出す。
エレベーターに乗り込み、今いた3階から会場のある2階へと降下する。
扉が開き、思わず息をのむ。私たちが降り立つよりも前に、廊下にいたスーツ姿の男性二人組がこちらに気付き、「副社長!」と歩み寄ってきたからだ。
彼に従うように、エレベーターを降りてすぐに、私も足を止める。
ふたりの素性は分からないけれど、彼と話している内容からして、洋菓子店の経営者のようだった。