溺甘副社長にひとり占めされてます。
彼の立場。自分の立場。そこに必要以上にこだわっているのは、自分だけなのだと気付かされる。
むしろ、彼にこだわりなど少しもなくて、普段だったら絶対に隠すだろう悲しそうな顔を私に見せてくれている。
私を一人の女性として必要としてくれている。心を許してくれている。大切にしてくれている。
胸がじわりと温かくなれば、私の心の中にも、新たな強い思いが生まれる。
彼の腕を掴む手に力を込め、歩き出した彼と共に、私も一歩を踏み出した。
廊下にいた来客だけでなく、会場内に入ればまた、白濱副社長に挨拶をしたい人々が一気に近づいてくる。
彼は変わらぬにこやかさで、ひとりひとり応じ続けている。慣れもあるのかもしれないけれど、さすがである。
一方、私は彼の隣で笑みを浮かべ続けているだけだと言うのに、気を抜こうものなら、精神的な疲労感がジワリと表情に出てきてしまう。
普段そこまで笑わないから、頬も痛くて仕方がない。
「美麗ちゃん。飲み物でも飲んで、少し休憩してていいよ」
「ほっ、本当ですか!?」
つい声を弾ませてから、はっとし、表情を引き締めた。おまけに咳払いもしておく。