溺甘副社長にひとり占めされてます。
「……あの。入口近くにあった、飲み物、美味しそうだなって気になってたんですけど。飲みに行ってきても良いですか?」
「いいよ。俺、このあたりから動かずにいるから、気持ちが回復したら戻って来てね」
「ありがとうございます」
ひそひそとやり取りを重ねてから、私は近づいてきた男性客に対し、「失礼します」と軽く会釈をし、その場を離れた。
彼から離れれば、緊張で張りつめた心も落ち着くかと思ったけれど、そう上手くはいかなかった。
女性たちがじろじろと私に視線を向け、こそこそと言葉を交わしているのだ。
嫉妬が交じったかのような眼差しは、白濱副社長が私を婚約者だと紹介しているせいだろうと、心の中で結論付けた。
お目当てのテーブルにたどり着く。瑞々しいフルーツの隣に、いくつかジュースが並んでいる。置かれているフルーツを使っているのだろう。どれもとても綺麗で、濃厚そうな色合いだ。
どれか飲みたい。考えながら、紫色のジュースに手を伸ばし……慌ててとめた。
この紫色の液体を、身に着けているアイボリー色のドレスにこぼしてしまったら。
そんな想像がぱっと浮かんできたから、恐ろしくなってしまった。