溺甘副社長にひとり占めされてます。

彼がこちらに手を差し向けてきた。


「もしかして……私、紹介されてる?」


ぼんやりと感じたことを言葉にすれば、宍戸さんが不機嫌な顔になった。いつも通りに睨みつけられ、白濱副社長が私を婚約者だと言ったことが分かった。

宍戸さんが女性たちとこそこそ話し始めたのを見て、私は彼らからテーブルの上のフルーツへと視線を移動させる。

いま戻ったら嫌味を言われるに決まってる。宍戸さんたちが彼の元を離れるまで、私はここでじっとしていよう。

そう強く考えた時、「こんにちは」と横から声を掛けられた。隣りに立った男性へと顔を上げ、私は小さくあっと声を発した。


「また会えましたね。美麗さん」


私の前に現れたのは、行きつけの喫茶店の常連である武田さんだった。


「こんにちは」


軽く頭を下げると、彼は誰かの姿を探すように、私の周りを見た。


「白濱副社長なら、あちらです」


宍戸さんと話し中である彼の居場所を教えたけれど、武田さんはその場から動かなかった。


「いえ。美麗さんに少し、お願いがありまして」

「え? わ、私にですか?」


にこやかに笑って言っているけれど、白濱副社長の持つ人当たりの良さのようなものは、感じられなかった。


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