溺甘副社長にひとり占めされてます。
明暗の違いはあれど、同じ灰色だった。
そして私がジュースをかけてしまったあの女性のドレスも……。
嫌な予感に囚われていると、肩に触れていた彼の手に力が込められた。
「美麗ちゃん。行こう」
「……はい」
彼と共に歩き出す。
宍戸さんの前を通りすぎようとした時、彼女と目が合ってしまった。
その瞬間、彼女が笑った。
私を馬鹿にしているような、嘲笑っているようにも思える笑みに、ドクリと鼓動が強く響いた。
彼女だ。
今の状況では、姿を消してしまった女性が宍戸さんの友人だと断言できる確かなものなどないのに、私はそう確信してしまっていた。
心の中が、怒りと悲しみと不甲斐なさで満ち溢れていく。
どんなに頑張っても、結局は負けてしまうのではないかと、悲観してしまう。
やっぱり私には、彼の隣に立つ資格などないののかもと、ただただ打ちのめされそうになる。
歩きながら、白濱副社長が私の頭に触れた。
そのまま私の頭を傾けて、自分の頬に押し当てる。
「美麗ちゃん、大丈夫だよ。大丈夫だから、そんな悲しそうな顔しないで」
彼の言葉が優しく響いてくる。温かくて、涙が込み上げてくる。
「私は大丈夫です。これくらい平気です」
泣かないように我慢しながら返事をすれば、彼が私の頭をそっと撫でた。
「内ポケットからスマホ取ってくれるかな」
彼からのお願いにすぐに返事をし、私は羽織っているスーツの内ポケットからスマホを取り出した。