溺甘副社長にひとり占めされてます。
そんな言葉と共に、涙を浮かべれば、課長の怒りが一気に爆発する。
そうなればもう完全に話の論点がずれていく。
書類のミスの話なんてどこへやら、してやったりな顔をしている宍戸さんの横で、部長に怒りの剣幕で怒鳴りつけてくる。
それから昼の休憩時間になるまでずっと、私の態度についてのお説教が続けられたのだった。
そしてお昼休みに入っても、私の気は休まることはなかった。
宍戸さんが課長と村野さんに、給湯室での話をしはじめたのだ。
もちろん白濱副社長にたしなめられたことは話題になどしない。
話すのは白濱副社長が私を“美麗ちゃん”と親しげに呼んでいたことだけだ。
宍戸さんは私が必死に副社長に媚びを売ってると呆れたように、村野さんはあの副社長相手に頑張りますねと冷めた口調で、課長は見た目地味なくせに美麗だなんて名前完全に名前負けだと下品に笑う。
始めはこそこそと話をしていたけれど、だんだんと声は大きくなっていく。同じ室内にいる私にも聞こえてしまうくらいに。
私の名前は美麗。
名前負けしていること、地味だということ、それは自分が一番わかっている。
他人に言われるまでもない。