溺甘副社長にひとり占めされてます。
私が彼女を見ていたように、彼女も私を観察していたらしい。ドレスのシミに気が付いた途端、村野さんは表情をこわばらせて、近付いてきた。
「あらら」
ドレスに触れながら、小さく呟いた。
「彼女、着替えさせたいんだよね。力を貸してくれる?」
白濱副社長の言葉に、村野さんはほんの一瞬目を見開き、そしてニヤリと笑った。
「もちろん! さらに館下さんの魅力を引き出してみせるから、任せて」
「頼もしい」
さっそく村野さんがエレベーターのボタンを押した。そして到着したエレベーターに乗りこもうとする。
しかし、続こうとした私たちに「ちょっと待って」と手をかざす。
「和臣さんは来なくて良いから。会場に残って副社長としての役目を果たしてて」
言いながら、私が羽織っていたジャケットを彼に押し付けた。
「楽しみにしてて。惚れ直させてみせるから」
「よろしくね」と笑みを浮かべた白濱副社長をその場に残し、私は村野さんに手を引かれ、エレベーターに乗りこんだ。
「そう言えば、宍戸さんをちらっと見かけましたけど……」
静かな箱の中で、村野さんが話しかけてきた。