溺甘副社長にひとり占めされてます。
疑いの眼差しを向けると、村野さんが苦笑いしながら持っていた片方のドレスを私に見せてくれた。
彼女が勧めてくれたのは、ネイビーのドレスだった。
ノースリーブの上半身部分は細かくレースがあしらわれていたり、透け感も有りと、今着ているものと近い。
しかし、ウエストは絞られていて、そこから広がるスカート部分は、前は膝が出るくらい短く、後ろは対照的にふわりと長くなっている。
「可愛い」
ため息交じりに呟いた後、私はあることに気付いた。
「これ……確か、AquaNextの新作ですよね? この前カタログで見ました、ちらっとだけですけど」
すぐに白濱副社長にカタログを取り上げられてしまったから、本当にちらっとだけだ。
「やっぱり! 気付くと思ってました」
「……わっ、私! これが良いです!」
「そうですね。私もこれが良いと思います。絶対似合いますから。みんな目を奪われるでしょうし、AquaNextの社長にも喜ばれるでしょうし……宍戸さんは黙るしかないです」
村野さんはドレスをハンガーラックに戻すと、代わりにバスローブらしきものを私に手渡してきた。
「まずはその化粧、落としてきてください。私が館下さんにあわせて、化粧し直しますから。もっと綺麗にしてみせます。和臣さんが惚れ直すくらいに」