溺甘副社長にひとり占めされてます。
ホテルは28階まである。しかし28階にはレストランが入っていて、実質、客室としての最上階はこの27階であり、この階に泊まる客も最上級ということになる。
部屋に入れば約二メートル四方の大きな窓に出迎えられた。
その向こうに広がっている夜景が綺麗でうっとりとため息をついてから、シックな装いの室内を見回す。
ベッドの近くに私が総務課で使用していた物よりも使い勝手が良さそうなワークチェアがあり、部屋の隅にはミニバーらしきものまで設置されている。
ソファーもベッドも全てが大きい。目に映るもの全てが、高級感で溢れている。さすがロイヤルムーンホテルだ。
その一社員として働けていることを誇らしく思うかたわら、最上級の客が泊まるであろう広々としたこの部屋で、ひとりぽつんと一晩過ごすのかと思うと寂しくなってしまう。
ふっと、視線がとまった。
サイドテーブルの上に置かれている小ぶりのボストンバッグに見覚えがあるような気がしたのだ。
それをぼんやり見つめていると、彼が言った。「ちょっと下に戻るね。眠かったら、俺を待たず先に寝てていいから」と。
にこやかな微笑みをこの場に残し、彼は颯爽と部屋をあとにした。