溺甘副社長にひとり占めされてます。
そそくさと、場を離れようとする私を、白濱副社長の声が追いかけてきた。
「美麗ちゃ――」
「わっ、私! 備品室に用事があって、通りがかっただけですので、失礼します!」
また私の名前を呼ぼうとしたから、焦り気味に大声を発し、副社長の声をかき消した。
小走りになりながらも、何度か振り返って頭を下げつつ、私は備品室の中へと飛び込んでいった。
ぱたりと戸を閉め、その場で項垂れる。
さっきの宍戸さんの顔を思い出すと、一気に気持ちが重くなっていく。
動き出せず、そのまま扉に背を預けていると、廊下から宍戸さんの可愛らしい声が聞こえてきた。
『あの、白濱副社長。山梨の新設されたホテルで催されるロイヤルムーンホテル45周年記念パーティのことですけど……』
宍戸さんの言葉を聞いて、そう言えばと思い出す。
我がロイヤルムーンホテルは、東京港区にロイヤルムーンホテル東京をオープンさせてから、首都圏をはじめ日本全国に40軒、北京やソウル、ハワイやニューヨークなど海外にも17軒と大きく成長を遂げ、そして今年、45周年を迎える。
近々、本社に近い一号店では役員が一同に会する“45周年決起集会”が行われ、それとは別に山梨の新設ホテルで、株主、政界や芸能界、海外の有力者、マスコミなどを集めた記念パーティが催される。