溺甘副社長にひとり占めされてます。
最大のターゲットが目の前に現れてしまったのだから、無理もないことかもしれないけど、さっきまで話しをしていた営業部の男性の存在は、完全に忘れてしまったらしい。
宍戸さんはうっとりとした顔で白濱副社長だけを見つめている。
白濱副社長は、その熱い視線にほんの一瞬キョトンとした顔をしてから、ふっと美麗な笑みを浮かべた。
「あー。宍戸さん、よく知ってるね。それね、今日からの予定だったけど、来週末に延びたんだ」
「そうだったんですね! 寂しかったから、会えてとっても嬉しいです!」
言葉通り、宍戸さんは嬉しそうに笑い、白濱副社長の腕を遠慮がちに掴んでいる。
何も言わず、その光景を眺めていると、突然、宍戸さんと目が合った。
瞬間、その表情が一変する。敵意に満ちた瞳で、じろりと私を睨みつけてくる。
あまりの形相に、息が止まった。ぞわりと、恐怖で全身が粟立っていく。
「ありがとう。俺もそう言ってもらえて嬉しいよ」
「本当ですか~! 副社長ってほんと優しいです!」
白濱副社長が話しかけたことで、また彼女の表情がガラリと変わった。可愛らしく笑っている。
彼女の怒りの眼差しから解放され、ほっと息を吐いたけど、このままここにとどまっていられるほど、呑気ではいられない。