嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
町田さん……。
つい先日、彼から告白されて断ったばかりだ。
そのことを思い出した途端、視線が泳いでしまった。
「……どうした?」
「えっ」
「なんか今、おかしかっただろ。視線が泳いでたし」
新庄くんが不審そうに私の顔を覗き込んでくる。
「そ、そんなこと……」
慌てて誤魔化そうとしたけど、次の言葉が見つからない。
新庄くんの目がじっと私を見つめてくる。
こういうとき、妙に鋭いのはやめてほしい。
「桜井、なにかあったのか?」
どうしよう。
さっき、『嘘をつくな』という話をしたばかりだ。
ここで適当な嘘を言って隠したとして、あとでバレたら……。
私は観念するように小さく息を吐き、正直に話すことにした。
「実は……、町田さんに告白されたの」
「……は?」
新庄くんの表情が固まった。
さっきまでの探るような瞳が、一瞬で鋭くなる。
「イベントの日、飲み会の帰りに好きだって言われて……」
そこまで話すと、新庄くんが眉を寄せた。
「それでどうしたんだ?」
「断ったよ。気持ちに余裕がなかったから……」
「……そうか」
新庄くんは安堵の息を吐く。
正直に話したことで、少しだけ肩の荷が下りた気がした。
だけど、新庄くんはまだ言い足りないのか、「あと……」と話を続ける。
「あのスイーツ友達は、本当にただの友達か?」
え、伊織くんのこと?
「そうだよ。彼には奥さんがいるしね」
「は?」
新庄くんの顔から険しさが消え、ぽかんと口を開ける。