嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
電話を切ったあと、先輩は笑顔で言ってくれた。

『電話対応で分からないことがあったら、すぐに代わってくれていいからね』

さらに、私が違うミスをしたときも、先輩は怒ることなく『慣れたら失敗はなくなるから大丈夫だよ』と励ましてくれた。
優しくされるたび、私は戸惑った。
どうしてだろう。
私は怒られないことが、逆に不安だった。

中学時代、バレー部ではミスをするたびに、顧問から厳しく叱られていた。
確かに自分が悪いんだけど、怒られるたびに委縮して、顧問に対して苦手意識を持つようになったんだ。

ヤル気も失い、部活を休む日も増えていった。
そんなある日、顧問が私たちにこう言った。

『君たちは見込みがあるから怒ってるんだ。打っても響かないヤツに、わざわざ怒ったりしない』

その言葉を聞き、期待しているからこそ、厳しく接してくれていたのだと知る。
それ以来、叱られることへの受け止め方が変わった。
単純な私は素直に顧問の話を聞けるようになり、バレーが前よりすごく楽しくなった。

その経験があったからだろう。
社会人になってからも、期待されている人は怒られるもの、とういう考えがずっと頭の中にあった。
だから、先輩たちが失敗した私を責めることなく、優しく教えてくれるたびに、嬉しい反面、私は見込みがないのかなと勝手に落ち込んでいた。

そんなときに声をかけてくれたのが、新庄くんだった。

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