嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
『別に桜井が怒られないから見込みがないってのは違うと思うぞ』

真剣な眼差しで話す新庄くんの言葉に、私は静かに耳を傾けた。

『人それぞれ教え方があるだろうし、考え方だって違うんだから。それに、見込みがないと思っている相手に、あんな丁寧に教えたりしないって』

そう言われた瞬間、胸につかえたものがふっと軽くなった。

『桜井の先輩は怒って育てるタイプじゃなくて、優しく諭してくれる人なんじゃね? それに比べて、俺なんて怒られるばっかりで自信なくすレベル。不公平だっつうの」

新庄くんは、苦笑いしながら頭を掻く。

「だから、桜井はそんな小さいこと気にせず、自分のペースで頑張ればいいんだよ。俺も頑張るから』

そう言ってくれたときの笑顔は今でも忘れられない。

今になって思えば、部活の顧問と会社の先輩を同じ基準で考えること自体が間違っていたんだけど。

新庄くんの一言で、落ち込んでいた気持ちが一気に浮上した。
彼の言葉は、今でも私の支えになっている。

それまでは、ただの同期でしかなかったのに、あの日を境に新庄くんを見る目が少しずつ変わっていった。

困っていたら、当たり前のように手を貸してくれるし、落ち込んでいれば、ちゃんと話を聞いてくれる。
さり気ない優しさに触れるたび、新庄くんのことをもっと知りたいと思うようになり、気づけば彼のことを目で追うようになっていた。

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