嘘をつく唇に優しいキスを

モノトーンのインテリアで揃えられた落ち着いたリビング。
さっきの寝室もそうだったけど、必要最低限の物しか置かれていない。

食事を終えた新庄くんがおもむろに口を開いた。

「昨日のことだけど、どこまで覚えてる?」

「えっと、会社の飲み会が終わって、新庄くんに車で送ってもらって……その後は覚えてない」

尻すぼみに小さくなる声。
いくら考えても思い出すことが出来なかった。

「だろうな。車の中でぐっすり眠ってたから。昨日、桜井のアパートに着いた時に揺すっても起きないから仕方なく俺のマンションに運んだんだ」

「ホントにごめんね。いろいろ迷惑をかけて」

あのまま睡魔に負けて寝てしまったなんて最悪だ。

「ホント迷惑。車から部屋まで運んだ時、すっげぇ重たかったし」

「重っ……」

確かにそんな軽い方じゃないと思うけど、ハッキリ言わなくてもいいのに。
しかも迷惑と言われ、本気で落ち込む。
時間が巻き戻せるなら戻したい。

恥ずかしいやら申し訳ないやらで顔を上げられない。

「ホントにごめんね」

「冗談だよ。そこまで落ちこまなくてもいいだろ」

絞り出した声で謝罪すれば、新庄くんはケラケラと笑う。
こんな状況で笑えない冗談は言わないでほしい。

「落ち込むよ。体重とか気にしてるんだから。女子にその話題は厳禁だからね!」

ムッとしながら抗議する。
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