嘘をつく唇に優しいキスを

「別に桜井は重たくなかったよ。寧ろ、軽かったし」

「今さらそんなフォローはいらないんですけど」

「でた、その膨れっ面!いつもの桜井に戻ったな。さっきのしおらしい桜井だとマジで調子が狂う」

思わず頬が膨れた私の顔を見て意地悪に笑う。

言い返そうとして気付く。
私と新庄くん、いつも通りに話せてる。

昨日、車内で気まずい雰囲気になったまま私は朝を迎えた訳で。
でも、こうしてお互いに悪態をつけるぐらいになっている。

この調子で喋れば大丈夫な気がする。
私は朝起きてからずっと気になっていたことを口にした。

「ねぇ、私を泊めて大丈夫なの?」

「は?どういう意味?」

新庄くんは首を傾げる。
こういう時は察して欲しいんだけど。

「私を泊めたことを彼女に知られたら困るんじゃないかなと思って」

「あー。なんだ、そんなことか。気にすんなって。第一、ここは俺の部屋なんだし、俺の好きなようにするよ」

「それはそうだけど……」

やっぱり気になるよ。
もし、このことが彼女に知られたら私はどうしたらいいんだろう。
なにもなかったとはいえ、彼氏の部屋に他の女が泊まったりしたら絶対に嫌だと思う。

それに新庄くんたちは結婚を考えているみたいなのに、話がこじれてしまったら罪悪感で一生顔向け出来ないよ。
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