嘘をつく唇に優しいキスを
***

「ここをこうして……」

風船をハンドポンプで膨らませ、キュッキュッと手でねじっているとパンッ!という音と共に風船が割れた。

「わっ!」

驚いて声が出た。

はぁ、また割れた……。
まだまだへっぴり腰で腕を精いっぱい伸ばし自分から風船を遠ざけながらも、やっと出来るようになってきたところで割ってるし。

それでなくても最初は怖くて風船をねじることすら出来なかった。
こんなにビビりだとは思わなくて自分の新たな一面を発見した気分だ。

一緒にバルーンアートをする町田さんは、自分の担当ブースと掛け持ちになるので、バルーンアートの方は私が主に担当することになった。
初のイベントでブースを任されるなんて責任重大だ。

「麻里奈ちゃん、こういうの得意そうに見えたんだけど……」

町田さんは言葉を濁し、床に落ちている割れた風船を見ながら苦笑いする。
期待外れでごめんなさいって感じ。

町田さんはコツをつかんだのかネットの動画を見ながらいろんな種類のバルーンアートにチャレンジしている。

会議室のテーブルの上には出来上がった犬や剣が数本置いてある。
どうしたらそんな短時間で習得できるんだろう。

「うぅ……、ホントに苦手だから町田さんに全部お任せしてもいいですか?」

つい泣き言をいってしまうのは仕方ないと思う。

「いい訳ないって。一緒に頑張ろうぜ」

満面の笑みを向けてくる。
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