嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
最悪だ。
あのとき、私が紹介してもらうと言った嘘がバレてしまった。
恐る恐る視線を向けると新庄くんと目が合い、心臓がドクンと跳ねる。
恥ずかしくて、居たたまれない気持ちになり、慌てて俯いた。
「太田さんの紹介とか怖すぎるでしょ。変に断れないし。麻里奈にも早く彼氏ができたら太田さんも仲人根性を出さないと思うんだけど。あっ、新庄くんの友達でいい人いない?」
北見さんは笑いながら新庄くんに話を振った。
きっと優しさから言ってくれているのかもしれないけど、話を広げないでもらいたいというのが本音だ。
「そうですね、考えてみます」
新庄くんの言葉を聞いて息をのんだ。
北見さんの話に適当に合わせただけだと思うけど、ショックを受けている私がいた。
「はい、コーヒー。じゃ、お先に」
北見さんは新庄くんにマグカップを渡すと給湯室を出て行く。
私も慌ててその場から離れようとしたら、新庄くんが声をかけてきた。
「紹介の話、嘘だったんだな」
「う、嘘じゃないよ。本当に紹介の話はあったから」
思わずムキになって言い返してしまう。
全部が嘘だったわけではない。
「そうか……」
新庄くんがじっと私を見ている。
その視線が、私を憐れんでいるように見えた。
可哀想な女だとか思われているんだろうか。
そう考えるだけで、惨めで情けない気持ちになる。
「じゃ、私は仕事に戻るから」
私は逃げるように給湯室をあとにした。