嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
定時三十分前、私は会議室を利用してバルーンアートの練習をしていた。

「ここをこうして……」

風船をハンドポンプで膨らませる。
動画で見た通りに、風船の根元を指で押さえながら、少しずつ空気を入れていく。
ポンプを外して風船の口を指で摘まみ、反対の手でねじっていると"パンッ"という音とともに風船が割れた。

「わっ!」

驚いて思わず声が出た。
はぁ、また割れてしまった……。

いまだに風船が割れるのが怖く、腕を精いっぱい伸ばし、できるだけ自分から風船を遠ざけながら作業している。
それでも、最初に比べれば少しはマシになった方だ。
割れてしまうかもしれないという恐怖から、風船をねじることすらできなかった。

「麻里奈ちゃん、こういうの得意そうに見えたんだけど……」

町田さんは言葉を濁し、床に落ちている割れた風船を見ながら苦笑いする。
期待外れでごめんなさいって感じだ。

そんな町田さんは、コツをつかんだのか、動画を見ながらいろんな種類のバルーンアートにチャレンジしていた。
会議室のテーブルの上には出来上がった犬や剣が数本置いてある。
どうしたらそんな短時間で習得できるんだろう。

「うぅ……、本当に苦手だから町田さんに全部お任せしてもいいですか?」

つい泣き言をいってしまうのは仕方ないと思う。

一緒にバルーンアートをする町田さんは、自分の担当ブースと掛け持ちになるので、こちらは主に私が担当することになっている。
初のイベントでブースを任されるなんて責任重大だ。

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