嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
ふと、町田さんが思い出したように口を開く。

「麻里奈ちゃんはもう帰れるんだろ」

「はい」

「なら、気を付けて帰りなよ。俺はまだ仕事が残ってるから」

「付き合わせてしまってすみません」

「なに言ってるんだよ」

町田さんがふっと笑う。

「俺が無理矢理、麻里奈ちゃんを道連れにしたようなもんだから気にすんなって。それに、いい気分転換になって楽しいから」

確かにその通りだ。
元はといえば、町田さんが私を巻き込んだんだし……なんて本音はもちろん言えるわけがない。

でも、自分の仕事もあるのに、こうして一緒に作ってくれていることには本当に感謝してる。
ひとりだったら、間違いなく途中で気持ちが萎えていたと思う。

「そう言ってもらって少し気持ちが軽くなりました。私はまず、怖がらずに風船を扱えるように、ちゃんと自主練習しておきます」

「そうだな。麻里奈ちゃんが風船をねじるとき、かなり顔が強張って腰が引けてるからな。こういうのは思い切りが肝心だし、何回もやってればすぐにできるようになるよ。練習あるのみ!」

町田さんの励ましに小さく頷いた。

オフィスフロアに戻ると、町田さんが今泉部長に声をかけた。

「部長! バルーンアートで犬とか作ったんですけど、お子さんにどうですか? みなさんもよかったらどうぞ」

町田さんが袋の中から犬の風船を見せる。

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