嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
他の社員の人たちは仕事の手を止めると、興味津々に袋の中身を覗き込んできた。

「お、なかなかいいのができてるじゃないか。このリボンなんて可愛いし。さすが麻里奈ちゃんだな」

今泉部長は黄色のリボンの風船を手にしている。
けれど、それを作ったのは私ではない。
残念ながら、あれは町田さんが何個か作ったうちのひとつだ。

「あの……それは町田さんが作ったものなんです」

「え、麻里奈ちゃんじゃないのか?」

今泉部長に言われ、私はバツが悪くなって肩をすくめる。

「私のはこれです」

手に持っていた二つの袋を持ち上げた。
片方のビニール袋には色とりどりの風船の残骸、もう片方の紙袋にはちょっとバランスの悪い剣が数本入っている。
それを見た今泉部長は「あっ」と小さく声を漏らし、隣では町田さんは困った表情を浮かべていた。

フロア内になんともいえない微妙な空気が流れる。
まぁ、そうなるだろうとは思っていたけど。

誰も口を開かずにいたら、重たい空気を一掃するような声が聞こえてきた。

「なに、その残骸。風船が勿体ないんだけど。桜井ってかなり不器用なんだな」

その声の主は新庄くんだ。
給湯室での一件もあって気まずかったから、できれば彼とは話がしたくなかった。

仕事中も、隣から向けられる視線が痛かった。
でも、気付かない振りをしてどうにか一日をやり過ごしていた。

不器用なのは自覚しているので、わざわざ口に出さなくてもいいのに。
恨めしい気持ちになる。

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