嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「ふーん、自信がないんだ」

新庄くんは意地悪な笑みを浮かべ、挑発するように言ってきた。

その顔を見ていると、絶対に負けたくないという気持ちが湧いてくる。
久しぶりの新庄くんとのやり取りで、すっかりヒートアップしてしまった私は、その挑発にまんまと乗ってしまった。

「そんなことないよ」

「なら、勝負しようぜ」

「いいよ。新庄くんの方が先にできたらなんでも言うことを聞けばいいんでしょ。じゃあ、私が先にできたら新庄くんが私の言うことをなんでも聞いてよ」

「あぁ、約束だからな」

お互いに言い合っていたら、帰り支度をしていた北見さんがクスクス笑っている。

「久々にこのやり取りを見たわ。二人の掛け合い復活ね!」

「北見さん、なに呑気なこと言ってるんですか。二人ともその辺で終わりにしなよ。ほら、麻里奈ちゃんはもう定時過ぎてるんだから早く帰りな。新庄はまだ仕事残ってるんだろ」

町田さんに窘められ、私は口を閉じた。
新庄くんもそれ以上はなにも言わず、自分の席へと戻っていく。

――やってしまった。
つい調子に乗って、余計なことを口走ってしまったなと反省する。

現状、新庄くんより先に、しかも上手くバルーンアートを作れる自信なんて全くない。
むしろ、負ける未来しか見えない。
それでも、今さら『やっぱりできない』なんて言えないし。

こうなったら、できる限り頑張ろう。
私は小さく息を吐き、バッグを手に取った。

「お先に失礼します」

フロアに残っている人たちに声をかけ、北見さんと一緒に会社をあとにした。
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