嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「風船、上手くできそう?」
駅へ向かいながら、北見さんが聞いてくる。
「ビビりだから思うようにできてないんですけど、上手く作れるように頑張ります。でも、イベントは初参加なので、すごくプレッシャーを感じてしまって……」
思わず本音が漏れる。
イベントに向けたバルーンアートの練習は、業務の合間に行ってもいいことになっていた。
だから、先日から時間を見つけては会議室で練習している。
バルーンアートで一番苦戦しているのは力加減だ。
怖がって力が弱いと全然ひねれない。
かといって、形を作ろうと思い切って風船をひねると、力加減を間違えて割れてしまう。
当日は、子どもたちの前で実演して渡すことになっているので、失敗したらどうしようと不安になる。
「そっか。私は、会場準備やお客さんの案内とか、裏方としてイベントに参加してたからなぁ」
基本、事務員は裏方の仕事をしていたと聞いている。
だから、今回はイレギュラーな形で私がブース担当になってしまったんだ。
「まあ、練習は裏切らないと思うから頑張ってね。私も、協力できることがあったらするから」
「ありがとうございます」
北見さんの言葉に、張り詰めていた気持ちが少しだけ和らいだ。
「イベントはお客さんがたくさん来るから大変だけど、その分楽しいからね」
「私は主に子ども相手なので、上手く接することができるか、そっちもドキドキです」
「子どもは素直で思ったことをすぐ口にするからね」
北見さんが苦笑いしながら、肩をすくめた。