嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
新庄くんの優しさに触れるたび、抑え込んでいた気持ちが揺らいでいた。
これっぽっちも望みはないんだから、無駄に優しさを振りまかないで欲しい。
まぁ、その優しさに惹かれたのは私なんだけど。
正直、学習能力がなさ過ぎた。

本当に結婚が決まっているのかどうかも分からない。
だけど、そういう話題が自然に出るってことは、将来のことを考えているからだろう。

「それってさ、結婚を控えてなきゃ、そんなこと言わないでしょ」

私は視線を落としながら言った。

「んー、まあそうかもしれないけど」

唯香ちゃんは、なんともいえない複雑な表情を浮かべる。

「付き合ってる人に片想いするのは、まだセーフな気がするんだよね。でも、結婚する人を思い続けるのは、私の中でナシなんだ」

それが、私なりの線引きだった。
恋人がいる人を好きになってしまうことは、良くも悪くもある。
その気持ちは止められないから、仕方のないことだと思っていた。

でも、『結婚』という話を聞いた途端、それ以上想い続けるのは無理だった。
だから、区切りをつけようと思ったんだ。

つい先日、好きな人を諦める方法をネットで調べた。
仕事や趣味に没頭するとか、自分磨きをするとか。
あとは、振られる覚悟で告白するといった内容が出てきた。

仕事はまあ置いといて、趣味に没頭するというのはアリだなと思う。
でも、私の趣味はスイーツ巡りだ。
スイーツを食べることに没頭するのは、それはちょっと違う気がする。

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