嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
振られる覚悟で告白か……。
こんなの同じ会社で働いているんだから、気まずくなるに決まってる。

告白して振られて、そのあとも毎日仕事で顔を合わせないといけないなんて、拷問でしょ。
席も隣だし、仕事で話すことだってある。
何事もなかったかのように振る舞える自信なんて、これっぽっちもない。
それに、自己満足で告白して、新庄くんを困らせたいわけじゃない。

なにかの拍子に、勢いで気持ちをぶつけてしまわない限りは、大丈夫だろうけど。

普通に生活して、スイーツ巡りして、他のことにも目を向ける。
今までは、自分の気持ちに嘘をついて想い続けていた。
だけど、今回は違う。
ちゃんとけじめをつけるんだ。

私に適しているのは、時間が解決してくれるのを待つことだろう。

「そっか」

唯香ちゃんは静かに頷く。
私は小さく息を吐き、わざと明るい声を出した。

「あーあ、どうして私の方が彼女より前に新庄くんと出会えなかったんだろう」

ポロリと未練の言葉が口から漏れた。
何度考えても、これはどうしようもないことだ。

そもそも、彼女より先に出会ったとしても、新庄くんと付き合えるという保証なんてどこにもない。
そんなことは分かっている。
それでも、出会うタイミングが違ったら……と考えずにはいられなかった。

「今までしんどかったね。泣きたくなったら、いつでも胸は貸すから」

カウンターに頬をつけていると、唯香ちゃんは優しく頭を撫でてくれる。
その手の温もりが心地よく、私はそっと目を閉じた。


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