嘘をつく唇に優しいキスを

最終日の日曜、特に大きなトラブルもなくイベントは大盛況に終わった。

余韻に浸る間もなく、私たちは後片付けに取りかかる。
大まかな物を片付けたところで社長が「今日はみんな疲れているだろうからこの辺で終わらせて、残りは明日しよう」と言い、それに従った。

誰かが話の流れで「打ち上げしよう」と提案していたけど、賛同する人はほとんどいなかった。
疲れているのにそんな元気はなく早く家に帰りたい人が多数。
結局、打ち上げは別の日にすることになった。

私は十八時半過ぎに会社を出た。
身体は疲れていたけど、このまま帰る気分にはならなくて買い物をしようと大型ショッピングモールに寄ることにした。

お店をはしごしていたらあっという間に時間が経ち、十九時半前になっていた。
街灯が照らされている歩道を歩き、駅に向かっていたら数メートル先のコンビニの前に俯いて立っている新庄くんの姿が視界に入った。

プルオーバーのパーカーに黒のスキニーパンツというラフな服装だったので、一度家に帰ったんだろう。

昨日のことがあり、下手に喋ったら墓穴を掘りそうだったから今日はまともに会話していない。
このまま見なかった振りをして立ち去ろうと思っていたんだけど……。

「あれ、桜井じゃん。まだ帰ってなかったのか?」

ちょうど顔をあげた新庄くんと目が合い、運悪く気付かれてしまった。
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