嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
店を出た瞬間、冷房で冷えた体に、生ぬるい九月の風がまとわりついた。
まだ強い日差しがアスファルトを照らしている。
日傘を片手に、駅までの道を歩く。

「そういえば、もうそろそろ仕事関係のイベントがあるんだよね。バルーンアート上手にできるようになった?」

「どうにかね。でも、まだ油断したら力加減をミスって割っちゃうんだけど」

肩をすくめながら言う。

「そっか。成功を祈るよ。あ、エクステリアの相談会もあるんだよね」

「うん。外構とか庭づくりなどの相談会が無料であるから、興味があったら来てよ」

「へぇ、無料なら行きたいかも」

歩いていると、信号が赤に変わり二人で立ち止まった。
ふと、向かいの歩道に見覚えのある男性が目に入る。
あれは新庄くんだ。
心臓が早鐘を打つ。

新庄くんの隣には、茶髪のふんわりとしたボブの綺麗な女性がいた。
柔らかな笑顔を浮かべながら、彼に自然に寄り添っている。
きっと彼女だ。

新庄くんは私に気づくことなく、彼女と並んで歩きながら楽しそうに笑っている。
彼女がなにか言いながら彼の腕を軽く叩く。
その仕草があまりにも自然で、見ているだけで胸がギュッと絞めつけられた。

彼女がいるのは分かってはいたけど、実際に目の前で二人並んで楽しそうに笑っている姿を見るのは、想像以上に辛かった。
思わず日傘を少し傾けて視界を遮り、俯いて唇を噛んだ。

「――ちゃん。麻里ちゃん、信号青になったよ」

「へ?」

「だから、信号が青になったよ。ボーッとしてたら、また赤に変わるよ」

慌てて信号機を見ると、歩行者用の信号が青に変わっていた。

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