嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
やがて、イベントの開始時間になった。
前もって広告を出していたおかげで、たくさんのお客さんが来ている
家族連れも多く、あちこちのブースに足を運んでいた。
子どもたちのお目当てはもちろん風船だ。
私のブースには、開始早々あっという間に行列ができていた。
次々と列に並ぶ子どもたちを見て、嬉しい悲鳴を上げる。
子どもがいる家庭は、まず風船をもらってから他のブースを見て回る、という流れになっていた。
自分が作った風船を嬉しそうに手に抱え、両親と一緒に歩く子どもたちの姿を見ると、自然と頬が緩む。
「わたし犬がいい」
列に並んでいた女の子が、明るい声で希望を伝えてくる。
「オッケー、すぐ作るからね」
そう返事をすると、女の子はパッと目を輝かせる。
思ってた以上に子どもたちが並んでくれ、前もって作っていた分は、すべて配り終えた。
今は注文を聞いて、その場で作ったものを子どもたちに渡している状態だ。
私は風船を手に、犬を作り始める。
長細い風船をねじっていたら、女の子は興味津々といった様子で私の手元を見つめていた。
風船が少しずつ犬の形になっていくと、その子の目が輝きだす。
ふと、行列に視線を向けると、ざっと数えても十人以上はいた。
イベントが始まったばかりで、町田さんは自分のブースの方が忙しく、バルーンアートまで手が回らない状況だ。
落ち着いたらこっちのブースにも顔を出してくれると言っていた。
それまでは、どうにか一人で頑張らなきゃ。
気持ちが焦ってしまい、思わず力加減を間違えてしまった。