嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「なんか変?」
「いや、全然変じゃない。前のもよかったけど、短い髪も似合ってる」
真顔でそんなことを言われ、心臓が大きく跳ねる。
照れくささと嬉しさで浮かれそうになる自分を、必死に律した。
これはお世辞で、他意はない。
そう言い聞かせる一方で、なんともいえないやるせなさを感じた。
女性の変化に気づいて、それをちゃんと言葉にできる新庄くん。
きっと彼女にも言ってあげてるんだろう。
先日見た、二人の姿を思い出して胸がチクリと痛んだ。
「あー、新庄くん。こんなところにいた!」
北見さんがこちらに向かってやってきた。
「北見さん、どうかしたんですか?」
「どうかしたじゃないよ。急にちょっと席を外しますって言ったきり、戻ってこないんだもん。田所主任が呼んでたよ」
「あー、マジですか? すみません。すぐ戻ります。じゃあな、桜井」
新庄くんは北見さんに謝罪すると、私に声をかけ自分のブースへ足早に戻っていった。
「北見さん、すみません。私がバルーンアートに手間取っていたから、新庄くんは手伝ってくれてたんです」
一応、彼のフォローだけはしておいた方がいいだろうと思った。
「そうだったのね。いきなり席を外すって言うから、どうしたのかと思っていたのよ。しかも、なかなか戻ってこないし」
「そちらのブース、大丈夫でしたか?」
心配になって尋ねた。
「うん、なんとかね。田所主任がひとり慌ててたけど、特に問題はなかったわ」
北見さんはクスクスと思い出し笑いをした。