嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
午前の部が終わる十一時半を過ぎても、まだ数人の子どもたちが並んでいた。
さすがに『ここで終わり』とは言えなくて、今並んでいる子たちには渡すことにした。
対応を終えて、バルーンアート用の風船を確認すると、残りは五個。
並んでいた子たちには、なんとか最後まで渡すことができた。
残った風船は、午後の部に回す予定だ。
そもそも、バルーンアートのブースは担当が二人しかいない。
というか、主に私ひとりで対応している。
際限なく並ばれたら体がもたないと思い、今泉部長に相談した。
それで、午前と午後の二部制にして、時間を区切ってもらったんだ。
ようやく一段落したところで、私は昼休憩のために移動した。
今日は会社で『和田さん亭』という惣菜店で弁当を注文していたので、社員は休憩室でそれを食べることになっている。
休憩室に入ると、数人の男性社員たちが昼食を食べていた。
私はテーブルの上にある弁当をひとつ手に取り、空いている席に腰を下ろす。
そして、さっそく弁当の蓋を開けた。
色とりどりのおかずがつめられた、美味しそうな幕の内弁当。
しかも、私の大好きな栗おこわ。
割り箸を割って一番に栗を掴んで食べた。
うちは、大手企業とは違って社員食堂というものがない小さな会社だ。
昼になると、それそれが外に食べに出たり、買ってきたりする。
私は自分で作った弁当や、会社の近くのコンビニで買ったものを休憩室で食べている。
弁当を食べ終わり、片付けようとしたところで休憩室のドアが開いた。
入ってきたのは、町田さんだった。