嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
「そうだったんですね」
それを聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
「そのお孫さんが『犬の風船をもらった』って言って、すごく嬉しそうに話してくれたんだって。社長が喜んでたよ」
「喜んでもらえてよかったです」
思わず頬が緩んだ。
風船をあげた子どもたちは、みんな嬉しそうに『ありがとう』と言って受け取ってくれた。
その顔が見れただけで、頑張ってよかったとしみじみ思う。
普段、子どもと接することがなかったので大変だったけど楽しかった。
予想以上に参加者が多く、途中でテンパってしまったことは反省だ。
まだ午後の部もあるので、午前よりはもう少しスムーズに作れるようにしたい。
「そうだ。これ、俺の妹から差し入れのお菓子。よかったら食べて」
町田さんはそう言うと、鞄の中から綺麗にラッピングされた袋を取り出した。
「いいんですか? ありがとうございます」
お礼を言って受け取ると、町田さんがふっと目を細める。
「妹にさ、麻里奈ちゃんの話をしたら、妙な親近感を覚えたらしい」
「えっ、どういうことですか?」
妹さんに私の話をした?
首を傾げながら尋ねた。
「俺の妹、めちゃくちゃ不器用なんだよ。前にバルーンアートの犬を持ち帰ったことがあるんだけど、詩織が……って俺の妹ね。詩織がやりたいって言うから教えてあげたら、何度も風船を割ってヘコんでたんだ」
「へぇ、そうだったんですね」
最初の頃の私みたいで、そんな話を聞くと、確かに親近感が湧いてくる。