嘘をつく唇に優しいキスを~諦めた恋が動き出すとき~
画面には【ホテルランチ最高】というメッセージと共に、色鮮やかな料理がたくさん写っていた。
「本当に美味しそうだね。しかも、文章から楽しんでるのが伝わってくるね」
「だろ。羨ましすぎるって」
伊織くんは口を尖らせる。
その顔がおかしくて、吹き出してしまう。
「でも、伊織くんだってスイーツを食べてきたんでしょ」
「まあね。でも、五百円ぐらいのケーキとホテルランチを比べたら……ねぇ」
「確かに」
思わず笑ってしまった。
ホテルのランチなんて、私もめったに食べる機会がない。
写真を見ただけでも美味しそうだったし、伊織くんが羨ましがる気持ちも分かる。
「そうそう、箱にはマカロンが入ってるんだけど、それは麻里ちゃん専用。あとの焼き菓子は会社の人用にどうぞ。もちろん、麻里ちゃんが独り占めしてもいいけどね」
伊織くんはそう言って、口元に少し意地悪な笑みを浮かべた。
どうせ、私が食いしん坊だと言いたいんでしょ!
「そこまで食い意地は張ってないから! まあ、本当は独り占めしたいところだけど、会社の人にも分けるね」
頬を膨らませながらそう答え紙袋のお菓子に視線を落とす。
「あはは、優しいじゃん。あっ、そろそろ説明聞いてくるよ。また、ご飯食べに行く日を決めような。じゃあ」
伊織くんは軽く手を挙げ、ゆっくりと背を向けた。
その後ろ姿を見ていると――。
「なあ、今話してた人、誰?」
不意にそんな声が聞こえ、心臓が跳ねる。
「し、新庄くん……」
振り向くと、新庄くんがすぐそばに立っていた。
いつからそこにいたんだろう。
休憩室と同じようなシチュエーションに、無駄にドキドキしてしまう。
不意打ちで声をかけるのは、やめてほしい。